卓袱台ができるまで
卓袱台ができるまで
廣瀬喜一の卓袱台
~簡素だが融通のきくこのうえなしの円卓。
江戸指物の伝統を受け継ぐ作り手に狂いはない。~
片付け、移動は自由自在
卓袱台は、一見なんの変据もない円形の座卓ですが、そのシンプルな形には伝統に裏打ちされた実用性がギュッと詰まっています。
昔から、「さぁご飯にしますよ」という母親の声で卓袱台をセットするのは子供の役目と決まっていました。脚を畳めばどこへでも転がしていけるのは円形の卓袱台ならでは。女性や子供でも楽に移動ができます。
円形だから何人でも座る人数の融通がきくし、正面もウラもないから座る全員が平等で、座に着けば自然に気楽な水入らずの団欒の場に。また、用のない時は片付けておき、必要に応じて食卓に、子供のお遊び台や勉強机に早変わり。状況に応じてフレキシブルに使える、そんな融通性が卓袱台のすばらしさです。
卓袱台の最大の特徴は、円形の天板と折りたたみ式の四脚という構造そのものにあります。天板の裏側に折りたたんだ脚を収納するのですが、跳板(はねいた)と言う可動式ストッパーがついているのがミソ。90度起き上がるだけのシンプル極まりない構造ですが、脚の出し入れを邪魔せず、脚をぐらぐらしないようしっかり抑えます。
卓袱台が出来るまで
素材は栓の木。
まず脚になる角材に木型を当てて線引きし、
ベルトサンダーで成形した後、手鉋で仕上げ。
反台、南京鉋など独特な道具が主役。
道具はすべて自作のもの。
卓袱台の脚を折りたたんで納める部分を
幕板(まくいた)といいます。
幕板の四辺をほぞ組にして止め、
そこへ跳板(折り畳み式の脚のストッパー)を
取り付けます。
幕板に跳板を取り付け、
4本の脚をはめこんで一度仮止めし、
実際に脚を畳んで見て細かく調整します。
それから改めて解体し、各部を塗装。
塗装も自分でやるのが喜一流。
天板の木口は
順目逆目を確かめながら
小さな鉋で削り上げ、
サンドペーパーで
丹念に磨きあげます。
天板と幕板を接合し、
木槌で叩いて締め、
3~4時間プレスをかけて圧縮
卓袱台の使い方
卓袱台は
円形の天板、
天板の裏側に取り付けられた
2脚1組の折畳式の脚、
脚を収納する幕板、
脚を固定させる2枚の跳板から
成り立っています。
脚を1組ずつ起こします。
跳板を1枚ずつ起こして
脚がぐらつかなくなるまで
固定させます。
跳板はキュッと強くしまるまで
固定させるのが長持ちさせるコツ。
ゆるいまま使うと、足や跳板の痛みが早くなります。